HOME > Bluetooth導入事例一覧 > 九州産業大学によるBluetoothモジュール性能評価


Bluetooth無線導入事例

九州産業大学との共同研究「ZEAL通信性能評価」

電流評価についての報告はこちらをご覧ください。


当ページでは
 九州産業大学情報科学部田中先生と研究室の学生の皆様による研究「ZEAL通信性能評価」
についてご紹介します。


そもそも田中先生は当社のお客様の一人として、ご自身の研究
 「Bluetooth通信を用いた低コスト・セキュリティシステムの構築」
にZEALを御利用頂いておりました。
この度、田中先生からご提案をいただき、 当社エイディシーテクノロジーと九州産業大学の共同研究という形でZEALについて評価をして頂くことになりました。

尚、共同研究は今後引き続き行われる予定となっており、
当ウェブサイトにて随時研究成果をご紹介させて頂く予定となっております。


本研究・参考文献の詳細につきましては、
当社、または以下までお問い合わせください。


九州産業大学情報科学部知能情報学科
田中康一郎様
Email:
Telephone:  092-673-5432


以下、報告書の内容です。


2007年度成果報告:ZEALの通信性能評価

九州産業大学情報科学部  田中 康一郎 氏
児玉 泰樹 氏 
吉田 智昭 氏 
石井 北斗 氏 
大野 晴雄 氏 
山川 由樹子 氏
安武 芳紘 氏 


報告書のPDF版はこちら
2007年度成果報告:ZEALの通信性能評価.pdf

1.はじめに

本報告書では,2007年度に九州産業大学で行われたZEALの通信性能評価につい て結果について報告する.
評価対象は,ZEAL-Z1とZEAL-C01の双方であるが,主として新型のZEAL-C01を用いた評価に注力した.
測定環境は,大きく分けて2つに対して行った.
一つが,ZEAL間の通信性能評価であり,もう一つがZEALとBluetoothを搭載したスマートフォン*1である.


以下2章では今回評価した環境について紹介し,3章ではZEAL間の通信性能評 価,4章と5章ではスマートフォンとの通信性能評価を示し,最後に簡単にまと める.


*1 同等性能の携帯情報端末(Personal Digital Assistant: PDA)も含む.

2.評価環境

ZEALは開発キットを使うことで簡単に利用することができる.
開発キットには,ZEALの他に,PCのシリアル・インタフェースに接続できるシリアルセットPC接続アダプタ*2とケー ブルが用意されており,それらを用いることで一般的なPCのRS-232Cを経由してBluetooth通信ができる.
今回の通信性能評価では,この開発キットを使用した.


PCには,DELL製のOptiPlex GX280を用いた.表1にその仕様を示す.

表1 OptiPlex GX280の仕様

CPU
Intel Pentium 4 (3GHz)
Memory
1GB
OS
Windows Vista Business (32-bit)


一方スマートフォンとの評価には,2機種を用いた.
一つはスマートフォンと同等の性能を持つHP iPAQ rx4240(以下,rx4240)であり,もう一つがNOKIA6680(以下,6680)である*3
rx4240は,OSとしてMicrosoft Windows Mobile 5.0を搭載しており,Microsoft Visual C#2005*4などを使ってプログラミングすることが可能である.
他方6680は,OSとしてSymbian OSを搭載しており,C++やPythonなどのプログラミング言語でアプリケーションを開発することができる.
これらは,日本国内で販売されている通常の携帯電話と異なり,プログラミングするための情報が公開されているため, 今回の評価対象に選定した.


*2 USBセットPC接続アダプタも用意されているが今回は利用していない.
*3 これら以外にも,TOSHIBA X01T,SHARP W-ZERO03で通信できることを確認している.
*4 2008年3月現在,我々はVisual C\# 2008を使用している.

3.ZEAL間の通信評価環境

3.1 通信プログラム
ZEAL間の通信性能評価を行うために,通信プログラムを作成した.
プログラミング言語には,Microsoft Visual C# 2005を用い,マイクロソフトから提供されている.NET Framework 2.0を利用してプログラムを作成した[1]


図1に今回開発した通信プログラムを示す.

通信プログラム
図1 通信プログラム

この通信プログラムには,ターミナルソフトのように文字を表示する機能とファイル転送機能を備えた.
また通信時の時間を表示できる機能を備えており,その結果を用いて通信バンド幅を測定することも可能である.


*5 現在は,.NET Framework 3.5を使用している.


3.2 有線通信によるPC間の通信性能
ZEALでの評価に先立ち,シリアルケーブルによるPC間の通信性能評価を行った.
ここで測定された結果は,ZEALで行うPC間の通信性能評価の最大性能となる.


測定では,データサイズとして1バイトから1Mバイトまでを対象とし,5回測定した値の平均を結果とした.
測定における開始時間は受信側のPCにデータが届いた時間とし,終了時間は受信したデータを全てPCのHDDへ書き込んだ時間とした.
したがって,本評価結果は純粋な通信時間よりも若干の長くなっていることが予想できる.
ボーレートに関しては,9,600 bps(ZEALのデフォルト),57,600 bps,115,200 bps(PCの最大)の3つを選択した.


図2に有線通信で行ったPC間の通信バンド幅,図3に有線通信で行ったPCのボーレートに対する通信性能比, 図4に有線通信で行ったPC間の通信時間を示す.

PC間の通信バンド幅(有線通信)
図2 PC間の通信バンド幅(有線通信)


PC間の通信性能比(有線通信)
図3 PC間の通信性能比(有線通信)


PC間の通信時間(有線通信)
図4 PC間の通信時間(有線通信)



シリアル通信では,データ以外にスタートビットとストップビットを含むため,理想値はボーレートの80%になる.
これらの結果から,まず9,600 bpsでは,8バイトといった小さいデータサイズにおいても安定した通信ができていることがわかる.
次に57,600 bpsでは,データサイズが小さいときは理想値より通信性能が劣るものの4kバイト以上では, ほぼ理想値に近い通信バンド幅を示すことがわかった.
最後に最も通信速度の速い115,200 bpsでは,57,600 bpsと比べると若干高い通信バンド幅を示すが, 理想値にはほど遠い性能しか発揮できないことが確認できた.
以降この結果を基準に,ZEAL-Z1とZEAL-C01の通信性能評価を行った.


3.3 ZEAL-Z1によるPC間の通信性能
図5にZEAL-Z1によるPC間の通信バンド幅,図6にZEAL-Z1によるPCのボーレートに対する通信性能比, 図7にZEAL-Z1によるPC間の通信時間を示す.

ZEAL-Z1間の通信バンド幅
図5 ZEAL-Z1間の通信バンド幅


ZEAL-Z1間の通信性能比
図6 ZEAL-Z1間の通信性能比


ZEAL-Z1間の通信時間
図7 ZEAL-Z1間の通信時間



9,600 bpsと57,600 bpsでは,ZEAL-Z1と有線通信はほぼ同等の通信バンド幅を示したことから, 通信バンド幅の観点から有線通信を無線通信に変更することは可能であることが確認できた.
一方115,200 bpsでは,原因は不明であるが16kバイト以上のデータを転送する際に,データをロストする現象が確認された.
バンド幅という観点においては,115,200bpsにおいても有線と同等の性能が得られた.


3.4 ZEAL-C01によるPC間の通信性能
図8にZEAL-C01によるPC間の通信バンド幅,図9にZEAL-C01によるPCのボーレートに対する通信性能比,
図10にZEAL-C01によるPC間の通信時間を示す.

ZEAL-C01間の通信バンド幅
図8 ZEAL-C01間の通信バンド幅


ZEAL-C01間の通信性能比
図9 ZEAL-C01間の通信性能比


ZEAL-C01間の通信時間
図10 ZEAL-C01間の通信時間



ZEAL-C01と有線通信よりも若干の性能低下が確認できたもののその差は大きくないため,
通信バンド幅の観点から有線通信を無線通信に変更することは可能であることが確認できた.
一方115,200 bpsでは,ZEAL-Z1で生じた原因不明のデータロストは,一切確認されなかった.


3.5 まとめ
本章では,ZEAL間の通信性能評価に関する報告を行った.
ZEAL-Z1に関しては,9,600bps,57,600 bps共に有線通信と同等の性能を示した.
ただし115,200 bpsに関しては,転送のデータサイズが16kバイトを超えるとデータロストが生じていた.
一方ZEAL-C01に関しては,今回評価したボーレート全てに対して安定した通信が確認できた.


4.ZEAL-C01とrx4240間の通信評価環境

4.1 rx4240のための通信プログラム
図11にrx4240の外観を表2にrx4240の仕様を示す.

rx4240
図11 HP iPAQ rx4240

表2 HP iPAQ rx4240の仕様

CPU
Samsung SC32442 (400MHz)
Memory
64MB(RAM), 128MB(ROM)
OS
Windows Mobile 5.0
Bluetooth
v2.0+EDR (Power Class 2)


rx4240は,OSとしてWindows Mobile 5.0を搭載しているため,Visual C# 2005で簡単にアプリケーションを開発することができる.
そこで,3章で紹介した通信プログラムと同等のものをrx4240向けに開発した[2]
フレームワークとして,.NET CompactFramework 2.0*6を用いた.


*6 現在は,.NET Compact Framework 3.5を使用している.


4.2 rx4240からZEAL-C01までの通信性能評価
図12にrx4240からZEAL-C01までの通信バンド幅,図13にrx4240からZEAL-C01までのボーレートに対する通信性能比, 図14にrx4240からZEAL-C01までの通信時間を示す.

rx4240からZEAL-C01までの通信バンド幅
図12 rx4240からZEAL-C01までの通信バンド幅


rx4240からZEAL-C01までのボーレートに対する通信性能比
図13 rx4240からZEAL-C01までのボーレートに対する通信性能比


rx4240からZEAL-C01までの通信時間
図14 rx4240からZEAL-C01までの通信時間



この結果から,rx4240が送信する場合は,ZEAL-C01と同等であることが確認できた.
115,200 bpsでの性能評価がない理由は,rx4240ではボーレートが64,000bpsまでしが選択できなかったためである.


4.3 ZEAL-C01からrx4240までの通信性能評価
図15にZEAL-C01からrx4240までの通信バンド幅,図16にZEAL-C01からrx4240までのボーレートに対する通信性能比, 図17にZEAL-C01からrx4240までの通信時間を示す.

ZEAL-C01からrx4240までの通信バンド幅
図15 ZEAL-C01からrx4240までの通信バンド幅


ZEAL-C01からrx4240までのボーレートに対する通信性能比
図16 ZEAL-C01からrx4240までのボーレートに対する通信性能比


ZEAL-C01からrx4240までの通信時間
図17 ZEAL-C01からrx4240までの通信時間



ZEAL-C01からrx4240までの通信はZEAL-C01間と大きく変わらなかったが,逆の通信ではZEAL-C01よりも高い通信バンド幅が確認された.
この理由は,rx4240のボーレートにあった.
Windows Mobile向けのプログラムでは,ボーレートの指定はするものの, そのボーレート以上の通信が可能であることが確認された.
そのため,rx4240が送信する場合は,受信側のZEAL-C01のボーレートが制約となり, そのボーレート以上の通信バンド幅を示すことはなかったが,rx4240が受信の場合,受信側にボーレートの制約がなくなるために, 小さいデータサイズではバッファリングによって理論値以上の通信バンド幅が測定されたり,大きいデータサイズではオーバヘッドが最小となり, ZEAL-C01を超える通信バンド幅性能を示すものと考えられる.


4.4 まとめ
本章では,ZEAL-C01とrx4240の通信性能評価について述べた.
rx4240で指定していたボーレートが有効でないため,rx4240が受信の場合はZEAL-C01の場合と比較して高い通信バンド幅が得られた.


5.ZEAL-C01と6680間の通信評価環境

5.1 6680のための通信プログラム
図18に6680の外観を表3に6680の仕様を示す.

6680
図18 NOKIA 6680

表3 NOKIA 6680の仕様

CPU
RISC CPU based on ARM-9 (220MHz)
Memory
8MB
OS
Symbian OS v8.0a
Bluetooth
v1.2


6680*7は,OSとしてSymbian OSを搭載しているため,C++言語やPython言語で 簡単にアプリケーションを開発することができる[3]. そのうち本研究では,プログラミング記述がより容易であるPython言語を用いた.
Python言語では,Bluetooth通信を記述する際に, Windows Mobileのようにシリアル通信として記述するのではなく,ネットワーク通信のソケットとして定義する.
そのためWindows Mobileのようなボーレートの指定はPythonでは不要である.


*7 国内において,この携帯はSoftBankとNTT DoCoMoで利用できる.


5.2 6680からZEAL-C01までの通信性能評価
図19に6680からZEAL-C01までの通信バンド幅,図20に6680からZEAL-C01までのボーレートに対する通信性能比, 図21に6680からZEAL-C01までの通信時間を示す.

6680からZEAL-C01までの通信バンド幅
図19 6680からZEAL-C01までの通信バンド幅


6680からZEAL-C01までのボーレートに対する通信性能比
図20 6680からZEAL-C01までのボーレートに対する通信性能比


6680からZEAL-C01までの通信時間
図21 6680からZEAL-C01までの通信時間



この結果から,6680はBluetoothのバージョンが1.2ではあるが,送信する場合は,ZEAL-C01やrx4240と同等であることが確認できた.


5.3 ZEAL-C01から6680までの通信性能評価
図22にZEAL-C01から6680までの通信バンド幅,図23にZEAL-C01から6680までのボーレートに対する通信性能比, 図24にZEAL-C01から6680までの通信時間を示す.

ZEAL-C01から6680までの通信バンド幅
図22 ZEAL-C01から6680までの通信バンド幅


ZEAL-C01から6680までのボーレートに対する通信性能比
図23 ZEAL-C01から6680までのボーレートに対する通信性能比


ZEAL-C01から6680までの通信時間
図24 ZEAL-C01から6680までの通信時間



6680でも,rx4240ほどではないものの,4.3節で述べた理由からZEAL-C01よりも高い通信バンド幅が確認された.


5.4 まとめ
本章では,ZEAL-C01と6680の通信性能評価について述べた.
6680でソケットプログラムとしてBluetooth通信を記述するため受信におけるボーレートの制約がない.
そのため,6680が受信の場合はZEAL-C01の場合と比較して高い通信バンド幅が得られた.


6.まとめ

本稿では,ZEALの通信性能評価について報告した.
ZEAL向けの開発キットを用いることで,シリアル・インタフェース(RS-232C)で接続された有線を容易に無線化することができることが確認できた.
またZEALは,他機種との接続親和性も非常に高く,我々が使用した全ての機種で問題なく接続し通信することが可能であった.


2007年度の卒業研究において,ZEALを用いたシステムを2つ開発した.
一つがBluetooth経由で情報を提供するとその情報を音声情報に変換して発声するシステム[4]であり, もう一つが同様にBluetooth経由で情報を提供するとその情報を携帯電話網を使ってWWWサーバにアップロードするシステム[5]である.


前者では,Zealからrx4240までの通信とrx4240からBluetooth搭載モバイル・スピーカーまでの通信を共にBluetooth通信で同時に行ったが, 問題なく具現化することができた.
また後者では,Zealから6680までのBluetooth通信と6680からWWWサーバへの携帯電話網による通信を同時に行ったが,正常に動作した.
以上の結果から,ZEALはシステムを構築する上で扱いやすく効果的なデバイスであることが確認できた.

参考文献

[1] 児玉 泰樹 : 汎用Bluetoothモジュールによるパーソナル・エリア・ネットワークの通信性能評価, 学士論文(九州産業大学 情報科学部(2008)


[2] 吉田 智昭 : Bluetooth搭載携帯情報端末によるパーソナル・エリア・ネットワークの通信性能評価, 学士論文(九州産業大学 情報科学部(2008)


[3] 石井 北斗 : Bluetooth搭載携帯電話によるパーソナル・エリア・ネットワークの通信性能評価, 学士論文(九州産業大学 情報科学部(2008)


[4] 宗 佑亮 : 携帯情報端末向けテキスト音声変換アプリケーションの設計と実装, 学士論文(九州産業大学 情報科学部(2008)


[5] 小田 浩之 : リソース状態に応じた携帯電話網向けデータアップロードシステムの実装, 学士論文(九州産業大学 情報科学部(2008)

本研究・参考文献の詳細につきましては、
当社、または以下までお問い合わせください。


九州産業大学情報科学部知能情報学科
田中康一郎
Email:
Telephone:  092-673-5432



当社エイディシーテクノロジーと共同研究を希望される大学関係者、研究所、企業の方がいらっしゃいましたら
どうぞ御気軽にご相談ください。


ページトップへ